鉛と錫を熱してつくる人工の黄色顔料。13~18世紀の西洋絵画で広範囲に使用されていたようである。フェルメールはじめ多くの巨匠も使用した顔料だったが、後に他の顔料に置き変えられつつ、19世紀には集団の記憶から消え去る。科学的な分析ツールが発達した20世紀以降に再発見される。鉛錫黄 lead tin yellowという名称は現代で使われているものである。当時の画家の間では、ジャロリーノ、マシコットなど様々な名前で呼ばれていたようだが、他の黄色顔料と名称が交錯している。
鉛錫黄には二つの種類がある。タイプⅠは酸化鉛と酸化錫を800℃で焼成してできたもの。タイプⅡは鉛と錫の他にシリカが使われているものと認識している。
以下に製法を記述するが、私は鉛錫黄に関して詳しいわけではない。国内で製法を詳しく記述しているものが他にないので、試みた範囲を中心に書き留めたものである。何かあればコメント欄にお願い致します。
作り方 タイプⅠ
酸化鉛はマシコット(密陀僧、PbO)またはミニウム(鉛丹、Pb3O4)を使用する。これらは顔料店で購入できるが、できれば本webサイト参照し、鉛白、マシコット、鉛丹共に自作したものを使うことを強く推奨する。というのも、市販の顔料はほとんどの場合何か別の顔料が混ぜられていることが多く、正しい実験結果を得られないばかりか、加熱により有毒なガスが発生する危険がある。写真の例では、材料や変化がわかりやすくなるようにミニウム使用しているが、鉛白顔料を焼いて自作したものである。研究目的であれば、鉛テープから自作した鉛白を使用しなければ正しい結果は得られないと考えた方がよい。酸化錫(SnO2)は陶芸店で購入できる。

ミニウム3に対して酸化錫1の比で用意する。ネット上に広く流布している比であるが、重量比なのか体積比なのか、モル比なのかわからなかった。

均等な顔料を作る為には、よく混合することが肝要であろうから、乳鉢などを使ってしっかりと摺り合せる。

焼成皿に入れて800℃で焼く。写真では電気を使用。700~800℃の間で調整すると、温度の高い方がレモン色に、低い方が暖かみのある色味になるとされる。

なお、本項の材料と配合比は一般的に流布しているものであるが、職人から以下のアドバイスを頂いている。
鉛白に対して錫2%、750℃でやってみてください。
— きっかわ (@kikkawa1964) August 9, 2024
量が多かったら、750℃のキープ時間を増やしてみましょう。
作り方 タイプⅡ
タイプⅡは酸化鉛と酸化錫にシリカ(二酸化ケイ素)を追加するようである。鉛:錫:シリカを2:1:1でこちらも800℃で焼成する。シリカが含まれる為にガラスを形成するので、焼成後は粉砕してフィルターを通して顔料とする。酸化錫とマシコットを焼成皿に入れて、何らかの炉で800℃で焼成する。と言いたいところであるが、温度を安定させられず、また材料の比率もよくわからず、製造にまだ成功していない。
補足:鉛錫黄についての古い記録にはボローニャ手稿にガラス工芸の為のジャロリーノがある。2段階のプロセスでガラス化した鉛錫黄を作るようである。金属鉛1と金属錫2の割合で溶かし熱して酸化物を作る。その酸化物4に対し鉛丹5、石英1と合わせて再度熱する。
ネイプルスイエロー
ネイプルスイエローも鉛を含む黄色顔料なので、ここで補足して述べる。ネイプルスイエローは鉛白などの鉛化合物とアンチモン化合物を焼成して作る黄色顔料である。鉛系の黄色顔料は名称が交錯して使われていたと述べたが、ネイプルスイエローも特に酷く、ナポリの火山灰ではないかという説もあった。現代の定義で言えば、鉛を焼成したものがマシコット、リサージと呼び、鉛と錫が錫鉛黄Ⅰ、鉛と錫と石英の焼成が錫鉛黄Ⅱ、鉛とアンチモンの焼成がネイプルスイエローと区別できるだろう。
ネイプルスイエローの製造はアンチモンに毒性があることと、焼成に時間がかかりそうだという理由でまだ試していない。アンチモンの金属塊または粉末はネット上で購入できる。鉛錫黄やネイプルスイエローの製造や使用は、ガラスや釉薬に関連すると言われているが、本項で紹介している製法に必要な鉛丹、酸化錫、アンチモン等は陶芸店で安く大量に購入することができる。

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