油性地塗り

油性の地塗りは、油彩技法専用の地塗りとなる。鉛白と亜麻仁油による地塗りが理想的である。鉛白の地塗りをしたキャンバスは最近では入手が難しい。油性キャンバスとして販売されているものはチタニウムホワイトと亜麻仁油が主体となっていることが多い。キャンバスの加工工程では地塗り塗料の一部が飛散するような状況が発生しやすいが、そのような環境で労働させるわけにはいかないので、致し方ないところである。個人的にはチタニウムホワイトの地塗りでも、ことさら大きな問題ではないと思うし、環境にもやさしい。ただし欧州製の油性キャンバスは亜鉛華まで入っている為、描画層の剥離を引き起こす原因になるかと思う。

鉛白による油性地を求める場合は、自家製という流れになるであろう。本項では鉛白による地塗りの方法について述べるが、その前になんらかの支持体が必要である。PVAで目止めした亜麻画布でよければ、市販のものが手に入る。獣皮の膠で目止めしたものが欲しければ、「生画布を張り、膠引きする方法」で述べている。オールドマスター風のキャンバスが欲しければ、膠目止めのキャンバスと鉛白地塗りはなかなか魅力的な組み合わせであろう。

さて、地塗りであるが、市販のファンデーションホワイトを塗布するのが良いと思う。ファンデーションホワイトは、想定されている使い方としてはおそらく市販のアクリル油彩兼用キャンバスの表面を調整する為のものであろう。もうそれで油性地塗りとしていいんじゃない?と私も思うが、それはともかくとして、ファンデーションホワイトは鉛白と亜麻仁油で出来ており、目止めの上に施す地塗り塗料としても最適であろう。メーカーによってはチタニウムホワイトと鉛白の混合であったりするが、より白色度を求めるならそれもよい。描画用の普通のシルバーホワイトはポピーオイルで練られている為、乾燥性や堅牢性の面で地塗りには適していない。また、海外製の鉛白絵具、地塗り用ホワイトなどは、なぜか亜鉛華が混ざっていることが多いので、選ばない方がよい。少量の亜鉛華なら問題ないという意見もあるが、無い方が安心できる。

塗布方法であるが、地塗りの場合には追加で乾性油は加えない方がよいのではないかと思う。あまりに脂ぎると、描画層の絵具を弾いたり、食付きを悪くするからである。ファット・オーバー・リーン、脱脂の上に油脂を、の法則を守りたい。かと言って、テレピン等の揮発油で溶きすぎても、固着力が低下してしまうであろう。僅かな精油で溶くか、精油に若干だけ亜麻仁油が入ったもので溶くか、そのあたりで調整するのであろう。

スタンドオイルのような堅牢な油で練りたいという人もあるかと思うが、やはり強力すぎるので加えるのがいいのかどうかわからないが、その場合、いったん新聞紙などで絵具から乾性油を吸収し、その上でスタンドオイルを混ぜて練り直すという方法も考えられる。そこまでするメリットがあるかはわからないが。

自分で体質顔料なども選んで地塗り塗料を作りたいという意見もあるかと思う。その場合、鉛白と展色材と諸々の助剤を練り合わせるのであるが、鉛白を練るというが、手作業では非常に労力が必要であり、アトリエの環境も汚しがちになるので、労力とメリットが釣り合わないのではないかという疑問がある。ただし小さなキャンバスに制作するという画家であれば、大いに活用できるかもしれない。その場合は「鉛白の作り方」を参照されたし。

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