本webサイトの記事を投稿するにあたって、参照している文献、引用している文献は以下の通りである。
チェンニーノ・チェンニーニ(著)/辻茂(編訳)『絵画術の書』岩波書店,1992
有名なIl Libro dell’Arteの日本語訳。ジオットの弟子のさらに弟子にあたるチェンニニ(Cennino d’Andrea Cennini)が記した技法書。テンペラ、フレスコ等、油彩登場前夜の技法について。油彩に関しても若干触れられている。この技法書が発見され、仏語に翻訳されたことが、ほぼ忘れ去られていたテンペラ技法復活のきっかけになった。顔料や媒材の作り方に関する記述が多く、本サイトはもっとも頻繁に参照し、引用している。日本語版による註、解説も多い。
テオフィルス(著)/森洋(編・訳)『さまざまの技能について』中央公論美術,1996
12世紀(成立年代は諸説あり)ドイツの修道士テオフィルスが書き残した技法書。絵画以外にも、金細工や工芸品、オルガン製作などについて述べられている。顔料製法などで本サイトは頻繁に参照、引用している。日本語版による解説も豊富。
『プリニウスの博物誌』全3巻,雄山閣出版
プリニウス(紀元23年~79年)が著した博物誌は、宇宙、気象、地理、植物、宝石など科学・技術全般を扱っており、全37巻から成る。古代という時代を考慮してもかなりいい加減な記述が多いが、ジャンルによっては具体的なことが書かれている。第33~34巻に顔料が登場。辰砂、鉛白、雄黄など。第35巻「顔料及び絵画・画家」が、古代絵画と画家を現代に伝えている。第37巻「宝石」に琥珀が登場。その他の巻にも、麻や樹木、樹脂、貴石など材料に関するものが多い。日本語訳(全3冊)は47,000円と高額だったが、ソフトカバー廉価版が発売された。そのうち、6冊目の『プリニウスの博物誌〈6〉第34巻~第37巻』縮刷版を入手するのがよろしいかと思う。本サイトもわりと頻繁に参照、引用している。ギリシア・ローマの古典を原文・英訳対照で刊行するLOEB CLASSICAL LIBRARYシリーズでもプリニウスの博物誌があるが、絵画に関する主な章はPLINY,NATURAL HISTORY BOOKS 33-35,LOEB CLASSICAL LIBRARY,1952,1999に収まっている。
ウィトルーウィウス(著)/森田慶一(訳注)『ウィトルーウィウス建築書』普及版,東海大学出版会
古代ローマ、カエサルからアウグストスの時代に活動していた建築家ウィトルウィウスが著した建築理論書。『建築十書』とも呼ばれる。建築以外にも土木や機械技術、天文学、歴史や哲学、数学についての記述も。ルネサンス期にアルベルティ、ラファエロ等の建築家によって熱心に研究された。第7書に辰砂、鉛白、緑青等の顔料の製造法が書かれている。本サイトでは顔料の製法を頻繁に参照、引用している。
R・J・ゲッテンス/G・L・スタウト(著)/森田恒之(訳)『絵画材料事典』美術出版社
プリニウス、ウィトルウィウスを初めとする古代文献、チェンニーニやテオフィルス等の中世写本、ヴァザーリ、その他のルネサンス、バロック時代の出版物や手記、19~20世紀の研究書(主に英語の文献)の情報が得られ、それらの書物のインデックスとして活用できる。本サイトは用語の使い方はできるだけ本書に準ずるようにしている。日本語版は販売終了。原書はペーパーバックで安価に手に入る→Painting Materials : A Short Encyclopedia
マックス・デルナー/佐藤一郎(訳)『絵画技術体系』美術出版社
日本ではラングレの『油彩画の技術』と双璧をなす技法書。原書はドイツ語で、初版は1921年。デルナー本人、そしてデルナーの死後はその後継者によって現在も改訂が続けられている。日本語訳は第14版を使用。註や解説が多く、頻繁に参照している。英訳版はMax Doerner,The Materials of the Artist and Their Use in Painting、第4~5版が元になっており、デルナー以後の改訂は適用されていない。
グザヴィエ・ド・ラングレ(著)/黒江光彦(訳) 『油彩画の技術』美術出版社
おそらく日本で最も影響力の高い技法書。冒頭のファン・アイクからルーベンスまでの技法の流れの解説は感動的。絶版。古書店でよく見つかる。原書が最初に出版されたのは1959年で、その後、アクリル・ビニル絵具に関して加筆された。日本語版も旧版と改訂版がある。
Arthur Pillans Laurie,Painter’s Methods and Materials,Dover Pubns
A.P.ローリーは20世紀初頭に活躍した英国の化学者で、絵画技法に関する科学的な調査の先駆者。主に顔料や展色材を解説。最も重要なテーマは「乾性油の性質と正しい使用法」。難易度の高い話を実にわかりやすい英語で書いている。乾性油関する本webサイトのベースとなっている。
London National Gallery Technical Bulletin 20 , 1999
London National Gallery Technical Bulletin は、ロンドンのナショナルギャラリーが発行する定期刊行物。修復や調査活動から生じた情報が載っている。現在は公式webサイトで無料でPDFファイルが公開されている。最も重要なのはVol.18とVol.20であろう。Volume 18, Early Northern European Paintingはファン・アイクなどの北方絵画、Volume 20, Painting in Antwerp and London: Rubens and Van Dyckはルーベンスとヴァン・ダイク。特にVol.20は油彩画家なら目を通すべきであろう。
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