人工の緑青、ヴェルディグリの作り方を紹介する。銅の素材を酢酸か炭酸アンモニウムで腐食させて作る。天然の緑青であるマラカイト(塩基性炭酸銅)は安定しおり、経年で変化することの少ない顔料であるが、細かく砕くと色が淡くなってゆく。ヴェルディグリはマラカイトと違って細かい粒子でも鮮やかな緑色になる。しかし退色しやすい。近代の合成色が出現するまでは、ヴェルディグリはかなり有用なものであったろう。ルネサンス期の油彩画の多くが、背景の木々が黒っぽく、まるで冬の景色に見えるのは、この顔料が退色したせいとも言われる。ただしヤン・ファン・アイクの作例のように鮮やかな緑色が残っていることもある。
こうして記事にして投稿するけれども、ヴェルディグリについての私の理解は僅かなもので、疑問も多く残っている。本記事はあくまで試みた程度のものであって、これを元にコメント欄で補足されることを期待しています。
さて、なんらかの容器の中で銅を酢酸によって腐食させるのだが、銅の素材は、銅粉を使うのが最も効率がいいようである。ボックスの底に酢を入れて、皿上に銅粉を入れて置いた。出来るだけ平たい皿に薄く銅粉を敷くとよいであろう。
なお、写真ではイースト菌の皿も見えるが、これは試しに置いただけで、あまり意味はないと思うので気にしないで欲しい。この状態だとたまにかき混ぜないと、全体が緑青化されないが、たまにフタを開けて、かき混ぜたり、太陽に晒したりするのは良いことだと思う。ときには乳鉢で摺って芯が腐食せずに残っていないか確認する。
銅粉の粉の内部まで腐食するように、かき混ぜては酢酸蒸気に晒し、太陽に当てるなどして様子を見る。最終的にこのような綺麗な緑顔料が出来上がった。
少量のヴェルディグリを体験学習的に作るなら、この程度でよいかと思われる。銅を含む酸の廃液処理にも困らない。
人工緑青ができたが、ここから何らかの仕上げをするべきかもしれない。あるいは、このまま練って使う方がいいのかもしれない。実際の使用に関しては情報が少ないので、コメント欄で述べて貰えれば幸いである。
私はペトロールで洗ったあとしっかり揮発させ、その顔料を乾性油で練った。油と馴染みやすく、また給油量が少ないようで、手練りの際は油を多く入れすぎないように注意しなければならないと思った。はじめはじゃりじゃりしているので、思わず油を多めにしてしまうのだが、油と馴染んでくると柔らかくなりすぎたと感じた。柔らかくなっても油断せずしっかり練らないと粒状のものが残る。
ここからは蛇足となるが、ヴェルディグリについて気がついた点を書いてゆく。ヴェルディグリは水に溶けるようである。ゼッキで購入したヴェルディグリでも同様だった。なお、そのまま水が蒸発するのを待っていると、針状の結晶となって再び出現した。
ゼッキのヴェルディグリで溶剤への反応を試したところ、水、酢、アルコールに溶けたが、テレピン、ポピー油には溶けなかった。自分で作ったヴェルディグリも同様の結果だった。
試しにペトロールを使うと水簸できた。
銅粉以外でも緑青の制作を試している。以下は銅板を腐食させた写真。
こちらは、銅のタワシを腐食させたもの。純銅のタワシは安く手に入る。芯まで緑青になるまでには時間がかかるようだ。
その他、緑青作りでは、塩、蜂蜜など追加して反応を買えることもできる。テオフィルスなどの書を参考にさまざまのパターンをテストしてみた。
樹脂酸銅などの課題も残るけれども、しかし実際の使用では退色の恐れが大きく、現代の油彩画であえて採用する理由も少ないので、私としてはここまでで、緑青作りを終えることにした。補足があればコメント欄でお願い致します。
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