概要
マシコット(密陀僧)と鉛丹(ミニウム)は、いずれも鉛を焼いて(酸化させて)つくる顔料である。古くは鉛白を焼いて作っていたようである。鉛白を空気に晒した状態で加熱すると、徐々にクリーム色になり、それから薄い黄色、やや赤味のある黄土色と変化する。このクリーム色から、黄土色あたりまでをマシコットと呼ぶのが妥当かと思われる。似たようなものに、リサージという名称があるが、マシコットとリサージの区別は曖昧である。全く同じ意味として使われることもあれば、区別して別の性質ものとして扱われることもある。マシコットを焼成し続けると、鉛丹となる。徐々にオレンジ色になってゆくが、酸化の強さによって赤味が増してゆく。
ここでは鉛白を焼いて、それらを生成してみたい。現在の工業的生産方法とは異なると思うが、中世の画家の工房のメモなどでは単に鉛白を壺に入れてかき混ぜながら熱するくらいの製法である。かき混ぜながら、というのは密閉された容器ではなく、解放された空気に晒された状態で焼いていたということなのであろう。
工程
鉛には毒性があるので、取り扱いには十分注意すること。
空気に触れる状態、言い換えれば密閉されていない状態で加熱する。写真ではフライパンとガスで行なっている。クリーム色から薄い黄色、少し褐色気味の黄色へと変化していく。
薄い黄色くらいがマシコットのイメージといえるかもしれない。
すこし赤味が出てきたので、マシコットとしてはこのくらいで留めておいた方がよいかと思う。写真の色は、米Natural Pigments社から購入したマシコットとちょうど同じ色調である。
マシコットを色材として積極的に使う理由はないように思う。ただしブラックオイルをつくる際の鉛成分としては、鉛白より適している可能性がある(ブラックオイル作る機会があまりないので試せていない)。
次にさらに加熱を続けると、橙色に変っていく。
このときにどのくらいの温度が適切なのかは、説がいろいろあってよくわからない。温度が高いうちは黒っぽくみえることもあるが、冷えるに従って明るい橙色になる。四酸化三鉛になっていると思われるが、完璧にはなっていないところで、色の違いが出てくるのかもしれない。
鉛丹は現役の立派な顔料であると思う。神社の鳥居の塗装によく使われるので、仏閣などの伝統的な建築では今でも多量に使われているそうである。
鉛丹と朱は混同されやすい。鉛丹、朱、弁柄は混同されやすい。朱が最も鮮やかではあるが、いずれの顔料も作り方によって色の幅がでるので、ぱっと見て区別がつかないこともある。
補足
チェンニーニは、朱を買うときは塊の状態のものを買うように勧めている。挽いたものだと、鉛丹をつかまされる恐れがあるという。チェンニーニは、鉛丹は板絵にのみ適しているという。壁画に用いると、大気に晒されて黒ずむからと。
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