昔の画家の技法・材料に関する著作、論文、調査報告、展覧会図録等を紹介。「絵画技法に関する往時の著作物」、「保存修復、美術館の刊行物、図録等」にも関連文献あり。
ジョット、ドゥッチョ、ファン・アイク等の中世の時代から、ダ・ヴィンチ、ベラスケス、フェルメール、印象派、現代絵画まで、50名の画家をピックアップして、それぞれの技法を紹介。文章よりもイラストや写真が中心。1人の画家につき各4ページと手短にまとめられているが、短いのが幸いして分かりやすい内容になっている(この本の登場までは、やたら長くて訳のわからない技法解説書が多かった)。本サイトの掲示板に寄せられた話によると、印刷所が原稿を紛失したために増刷できないという。本文はそれほど長いものではないので、オリジナルの英語版Techniques of the World's Great Paintersを入手するという手もある。この英語版も品切れと改訂・再販を繰り返しており、常に新品を注文できるわけではないが、海外のネット古書店に山ほど在庫があり、しかも安いので入手は容易。
昔の巨匠らしく描くための手引き書。デューラー、ティツィアーノ、カラヴァッジョ、ルーベンス、ハルス、レンブラント、フェルメールの制作プロセスを写真で紹介。単なる模写ではなく、自分の絵を描くことを主眼としており、写真の制作プロセスも自身のオリジナルの絵となっている。モチーフが現代なのはやや違和感があるが、実用重視の結果とも言える。処方ばかり並べる技法書より断然わかりやすい。デルナーやラングレを読み解いて実践するには10年あっても足りないが、この本の読んだまま、その通りに実践できる。制作プロセスは一部疑問もあるが、材料に関しては共感するところが多い。誤解のない易しい英文なので、最初に読んでみる英語の技法書としてもお薦め。ただし、研究や調査の本ではなく、絵を描くための実践書であり、著者の主観的意見も多いので、学問的な性格の人は見ない方がいいかもしれない。本書の著者は日本では『やさしい美術解剖図―人物デッサンの基礎』という本で知られている。
入手済。
入手済。
著者のチャールズ・ロック・イーストレイク卿(1793-1865)はロンドン・ナショナルギャラリーの館長、王立芸術院の会長を務めた人物で、画家であり美術史家、特に絵画技法の専門家。このペーパーバック版は2巻が1冊になっている。Vol.1はギリシャ・ローマ美術、中世美術、テンペラ、18世紀イギリスの画匠の技法。Vol.2はイタリアの工房、ラファエロ、ダ・ヴィンチ、その他。
イタリアでテンペラ画が制作された時代背景、製作工程、支持体、顔料などを解説。後半は、ナショナル・ギャラリーが所蔵するテンペラ作品を取り上げ、修復や調査の結果を紹介しながら、細かい解説を行なう。科学的な実験結果と豊富な作品写真を並べての解説は説得力がある。
★★お薦め★★
中世ヨーロッパ絵画の材料と技法。中世絵画についての本を読めば必ずと言っていいほど参考文献として登場する定番の書。著者はチェンニーニや、De Arte Illuminandi(中世写本装飾画の技法書,著者不明)の英訳を行なっており、この本も壁画、パネル画、写本など偏り無く中世絵画を扱っている。現代の化学合成された顔料がなかった時代に使われた、天然や初歩的合成の色材について、またそれらの材料を活用するための様々な工夫に関心するに違いない。また、普段はどうしても、美術館で目にするようなレベルの高い絵画の材料ばかりに目がいってしまいがちだが、安い材料を使わねばならないケースや、写本の装飾や、普段の筆記に使う色材なども無視して良いわけではない。様々な意味で読んでおきたい一冊。
写本の文字を書く写字生、挿絵を描く画家の仕事について。小冊子だが材料や技法等を要点をまとめて解説。手頃な値段で概要を掴むのに最適。
ボッシュの図像学に関する本は山ほどあるが、技術に関する本は貴重な存在。しかも英語で読める。凄まじい量の技術情報が収められている。スペインの出版物であるためかAmazon系では注文できない。私はプラド美術館で購入。
ロンドン・ナショナルギャラリーにあるファン・アイクその他の作品の拡大写真を掲載。肉眼では見えないようなくらいに拡大し、古画のヒビの入り方などを解説している。全体的に写真主体で文字情報は少ない。役に立つかどうかは人それぞれだが、フルカラーの写真を多数掲載しているわりには、非常に安いので買っておいて損はない。
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)が所蔵するミケランジェロの2点の絵画、≪キリストの埋葬(油彩)≫≪マンチェスターの聖母(テンペラ)≫はミケランジェロの最初のローマ滞在に制作された未完成の板絵。若き日のミケランジェロの技術に迫る。
展覧会カタログ。技法面ではJill DunkertonによるTitian's Painting Techniqueという論文が要注目。印刷、製本の質が良いので、画集としてもなかなか。
ルネッサンスの時代(15〜16世紀)の絵画の下図(地塗りの上に最初に描かれる素描)に関する本。赤外線写真によって描画層の下にある下図を撮影、下絵の材料や技法に関する発見の論文集。前半は下図の総論、後半は各作品解説。
★★お薦め★★
様々な説が語られてきたレンブラントの技法だが、断層写真やX線写真などの化学的な証拠ともに語られる。初出は1988年。同名の展覧会の際に出版され、これがArt in the Makingシリーズの最初だったらしい。長らく品切れだったが、生誕400年を機に改版されて購入可能に。
★★お薦め★★
上記Art in the Makingと並んでレンブラントの技法に関する重要な情報源。図版の質が良い。
アムステルダム国立美術館の静物画に関する図録、技術面に関する論文集。前半は総論、後半は各作品の詳細。部分拡大や断層写真満載。ヘーム、ヤン・ブリューゲル、カルフ、ピーテル・デ・リング、ヤン・ファン・ハイスムなどバロック期ネーデルラント静物画の技術について知るのに貴重な一冊。静物画というジャンルに限らず、16〜17世紀の技法・材料に関しても大変よいテキスト。印刷の質が良く、画集としても一級。
★★お薦め★★
鬼のような勢いで拡大写真を載せているも、微妙にピントが甘いような気がする。
1996年の大展覧会の後に書かれた本で、フェルメールに関して日本語で読めるものでは決定版。技法に関する部分も手を抜かずに書いている(この手の本は技術面をすっかり無視していることが多かった)。資料、文献リストも充実。
★★お薦め★★
フェルメール研究サイトESSENTIAL VERMEERのJonathan Jansonの著書。Amazonでは取り扱っていない。http://www.lulu.com/で注文可能。著者から既に入手していると思うが、というメールが来たことがあったあったが実は未入手。似たような題名のHow To Paint A Vermeer: A Painter's History of Artという本があるが、これはGeorge Deemという人物の(取り立てて注目すべき点のない)イラスト集なので踏んではいけない。
マウリッツハイス美術館が所蔵する2点「真珠の耳飾りの少女」「デルフト眺望」の修復に関する結果をまとめたもの。写真を見ただけでも興味深いが、本文が蘭語なので私には何が書かれているのか全くわからない。
ルーベンス特集号。巻末に森田恒之氏による「ド・マイエルヌ手記」の紹介記事あり。概説と抜粋訳から成る。ド・マイエルヌは17世紀英国の宮廷侍医。絵画の材料や技法に深い関心を寄せ、宮廷を訪れる画家から聞いた話や、自らの実験等を記録したものが有名な「マイエルヌ手記」。『別冊みづゑ』1970冬号は古書店で見つけるのは難しいが、図書館にはよく置いてある。
ロンドンのナショナルギャラリーが発行する定期刊行物。修復や調査活動から生じた情報が載っている。この巻はルーベンスとヴァン・ダイクの作品を扱っている。この巻に関しては、単に知識を得るだけではなく、絵を描く際にも圧倒的に参考になる。Technical Bulletinシリーズの中でもVol.18と並んで傑作中の傑作。油彩画家なら入手しておくべき。もう売ってないけど。
★★お薦め★★
昔の画匠の素描技法。ハードカバー1.3万円。未入手。
注文済み、未入手
未入手
入手済み、未読。バロックまでの資料は数多いのですが、この時代に関しては貴重な本かと思われます。パラと閲覧した分には、たいへん充実した内容に思えました。
ターナーの作品を多数所蔵するテートギャラリー発行。ページ数は少なめだが、£9.99と買いやすい価格。写真は豊富だが、個々の作品を詳細な調査結果などが掲載されているわけではなく、少々物足りないと思うかもしれない(価格相応とも言える)。前半は少々退屈するかもしれないが、顔料やメディウムの章からは興味深い話が続く。
ラファエル前派の技法について。既にジンクホワイトを初めとする新しい顔料が多数登場し、古典絵画の書と比べると隔世の感がある。ラファエル前派の活動期間も短い。なお、ラファエル前派というと、ロセッティの女性像を思い浮かべるかもしれないが、あれは厳密にはラファエル前派解散後の活動であり本書には出てこない。
★★お薦め★★
印象派の画家たちの技法や画材について読むならこれ。前半部分は、印象派が登場する時代の状況、アカデミーや野外でのデッサン、画材の製造や流通など全般的な解説。後半は、各作品を取り上げての詳細な調査と解説の資料。かなりのボリューム。既に版元在庫切れ。
★★お薦め★★
ドガの画材と技法。
最終更新日 2011年9月13日
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